ホーム > 2010年ニュルブルクリンクレースを語る-Part2 高岡英夫×クラゴン×藤田竜太鼎談 「好きな講座に出て、好きなメソッドにハマったら、ニュルでポルシェに乗れた!(10)」

クラゴン

2010年ニュルブルクリンクレースを語る-Part2 高岡英夫×クラゴン×藤田竜太鼎談

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫
    運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」を開発。
  • クラゴン
  • クラゴン
  • レーシングドライバーとして世界最高峰のサーキット、ドイツ・ニュルブルクリンクでのレースで活躍するなど、専門筋をうならせる傍ら、ドラテク鍛練場クラゴン部屋を主宰し、一般ドライバーの運転技術向上にも取り組む。「クラゴン」は日本自動車連盟に正式に登録したドライバー名。ゆるトレーニング歴は約10年。2010年9月のVLNにポルシェで参戦。
  • 藤田竜太
  • 藤田竜太
  • 自動車体感研究所(ドライビング・プレジャー・ラボラトリー)所長。自動車専門誌の編集部員を経て、モータリング・ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。ゆるトレーニング歴も10年以上で、某武道の指導者という顔もある。

最終回 好きな講座に出て、好きなメソッドにハマったら、ニュルでポルシェに乗れた!(10) (2011.03.04 掲載)

初学者には、ある程度受講する講座を指定して、講座を学びながら育てていくことも必要

高岡 私は運動総研の講座を一般の参加者の皆さんに混乱無く学んでいただけるようにするために、各講座の内容について、こういう考え方でできていて、どんなメソッドで組み立てられていて、どんな風に楽しんだらいいか、また効果や活用の仕方として何を狙っているかということなどを語り、それを文章にしてDMやホームページ上でじっくりと読んで理解していただけるようにしているんだよ。皆さん自身によく考えていただきたいのでね。
 ただ、ガイドライン的な考え方は当然確立されているわけです。例えば、まずははじめに「トップ・センター」を受けてから、その他のセンター系2種目の「サイド・センター」「ダイナミック・センター」に進む方が良いとか、三丹田の中では下丹田を中丹田よりも先に受講した方がより望ましい、といった具合にね。
 それはトップ・センターについていえば、それが最重要な身体意識だからということもあるけれど、受講者本人にも理解しやすく、自習するに取り組みやすいということもあり、また何より安全、安心な育ち方につながるからね。
 また「トップ・センター」から受講すれば、身体意識全体の中の位置づけの上で位置不明といったことにもならないからね。これがもし、「トップ・センター」を受講しないで、「ダイナミック・センター」や「サイド・センター」を受講しちゃったりすると、どうしてもある程度は位置不明になるんじゃないかな。

クラゴン その結果は間違いなく若干の不安をもたらすでしょうね。

高岡 クラゴンもそう思うかね。もっともそういう選択が、まるっきりNGというわけではなく、多少の不安の中のおもしろさ、つまりスリリングなおもしろさというのを味わえるという魅力はあるんだよ。とはいえ、いきなり「ダイナミック・センター」は、ちょっとだけスリルがありすぎるかな(笑)。

  • 運動総研講座の中でもトップの人気を誇る身体意識を鍛える「トップ・センター」
  • 運動総研講座の中でもトップの人気を誇る
    身体意識を鍛える「トップ・センター」

藤田 一般のサラリーマンや主婦などの方々にとっては、スリリングなおもしろさも良いでしょうが、競技選手はそうもいってられないと思うんですよ。バッチリどのタイミングで、どの講座を受講すればいいのか、というのが絶妙にわかる必要がある、でもそれには身体のセンス、身体の感度もそれなりに高くなってくる必要があるわけですよね。

高岡 そのとおりだね。だから、まだその水準まで達していない選手には、その選手の状況・個性などを考慮しつつこちらが受講する講座を順序正しく指定して、講座を学びながら育てていくというやり方を取ることは当然あるよ。
 例えば、「まずトップ・センターに出なさい。次は裏転子と下丹田、そして身体能力の方では股関節開発法か拘束腰芯溶解法がいいだろう」とか。それから普段、移動が多い選手だったりすれば、呼吸法のベーシックな部分を一通り学ばせるんだ。呼吸法なら、飛行機や電車、クルマの中でも出来るので、その長時間の移動時間が、そのまま身心を高めるための鍛錬の時間として活用できるようになるからね。
 とくにワールドカップなど海外への遠征が多い選手や国際的に活躍するビジネスマンやモデルなど、機上での移動時間が長い人には、呼吸法から学んでいくメリットというのは絶大だからね。だからそういう人たちには、とにかく「呼吸の達人」の基礎を身につけてもらうように指導しているんだよ。

アドバイスは「もっとゆるめ」だけ

クラゴン ボクもドイツに行くときは、飛行機の中で呼吸法ベースのⅠ、Ⅱ、Ⅲをやるようにしています。

高岡 クラゴンが私にとくに指示されたわけではないのに、学んだ呼吸法を機上でじつに的確におこなっているのも、クラゴンがさっきも話したとおり、「ゆる」でとことん育っている選手だからだね。実際だれでも「ゆる」をある段階までやり込んでくると、どの講座、何のメソッドを自分が必要としているかが、よ~くわかるようになってくるからね。

クラゴン まったくその通りですね。先生の講座とメソッドのあの厖大な世界の中を悩みなく泳ぎまわるというか、遊んでまわってる自分がいますからね。

藤田 あれだけたくさんの講座があるんだから、ふつう考えたら悩んで先生に相談したくなるだろうに、悩むどころか300パーセント楽しんでますからね、クラゴンは。

一同 (大笑)。

高岡 とにかく一番大切なことはどこまでも徹底的にゆるんでいくことなんだよ。だからいつ、どこでクラゴンに会ったときでも、私がクラゴンに言うことは「もっとゆるめ」の一言だけなんだよ。

クラゴン レースに出発する前に頂戴するアドバイスも「もっとゆるめ」ですし、レースを終えて帰国して、レースの報告に伺ったときも「もっとゆるめ」とだけしか、高岡先生はおっしゃられていませんから(笑)。

高岡 何度もいうけど、それ以外もういうことはないし、逆にそれ以外の何をいってもいけないからね。「もっとゆるめ」「もっともっとゆるめ」それで足りなきゃ「もっともっと…もっともっとゆるめ」だよ。

一同 (大笑)。

クラゴン それがホントに助かっているんですよ。指導を受ける側からすると、やれ入賞しろ、何秒出せ、表彰台に上がれ、といった具合に、具体的な結果を期待されることがないというのが、本当に救いになっているんです。
 というのも、モーターレーシングの世界で「結果を出してこい」というのは、最終的に「もっとアクセルを踏んでこい」という話になってくるので、そうなってくると生きるか死ぬかって領域にどんどん入ってきてしまいますから……。

高岡 そうだね!

クラゴン それだけに「数字を出してこい!」ではなくて、「とにかく、ゆるめ」といっていただくと、ボクもホントに助かりますし、助かっています。

高岡 まあ、よくぞいってくれたって感じだよね(笑)。

「生きていて、こりゃ楽しいぞ~」と思えることが一番大事

高岡 ここまで、けっこう真面目な話も沢山してきたわけだけど、なんでこのWebでこれだけのスペースを使って、クラゴンのニュルへの挑戦について語ってきたかというと、けっきょくのところ、クラゴンが「生きているって、オモシレ~」と楽しんでいるところを、皆さんにも伝えたかったからなんだよ。

一同 (大笑)。

  • 運動総研講座の中でもトップの人気を誇る身体意識を鍛える「トップ・センター」
  • まずはゆる体操~ゆるトレーニング、そこからクラゴンと同じように
    本格的なトレーニングにはまっていって欲しい

高岡 もちろん私自身も「生きているって、オモシレ~」ってのを最高に楽しんでいる一人なんだけれどね。

一同 (大笑)。

高岡 だから、この一連のニュルブルクリンク鼎談シリーズをお読みになっている皆さんには、いい意味で「くそ~、クラゴンだけに楽しまれてたまるか~」という気持ちになってもらいたいんだな~。
 皆さん、それぞれ好きなことや専門種目が何だっていいんだけれど、どんな人生を送っている人でも、何はともあれ、まずは私の提唱しているゆる体操~ゆるトレーニングにはまっていただいて、そこからクラゴンと同じように、各種講座で指導しているような本格的なトレーニング、こうしたトレーニング全体をゆる関連トレーニングというんだが、それにはまっていってもらいたいんだよ
 そうすれば「生きているって、オモシレ~」と思えるようになると思うよ。

クラゴン そうですよね~。

高岡 そこが一番大事なんだよ。
 せっかくこの世に、とてつもなくスンバラシイー五体と脳を与えられて、さらには地球という環境と宇宙という構造のなかで、命を授かって生まれてきたわけだから。地球には重力があって、さらに地球を取り巻く宇宙規模で身体意識が成立し、さらには気の運動も成立するという、それだけ壮大な装置をみんなで共有しているのが、我々人間なんだから。
 その装置は人類全体で共有するにもかかわらず、誰が使ったってかまわないし、誰がどこまでハードに使ったって、けっして他人のことを侵害することがないのだから。

藤田 おっしゃるとおりです。

高岡 それらの装置は、いくら使ったとしてもまったく減ることがないのだから。それどころか、ウマクすると身体意識によって引き起こされる気の運動などは、ものすごくそれを使ってくれる人がいると、他の人もその恩恵に与れることがあるぐらいなんだから。

藤田 そばにいるだけで、気の流れを共有できたり、身体意識が良い方向に感化されたり、ということですね。

高岡 そういうこと。しかも感化されるだけでなく、こうした情報を得ることで、今度は生き方や考え方の根拠を得るというメリットだってあるわけだから。本当に遠慮会釈なく、どなたにもゆる体操からゆるトレーニングに打ち込んでいっていただいて、さらには身体意識のトレーニングや身体能力開発のトレーニングに一つひとつ、あせることなくはまっていっていただけるといいんだけれどね。

レース関係者にゆるトレーニングの「気持ちよさ」が理解され、支持され、広まってきている

藤田 高岡先生が常におっしゃっている「気持ちよさ」という考え方は、前回の24時間レースについての鼎談を含めて、けっこう広まってきたのでは、という手ごたえがあるんですよ。
 少なくとも、ワタシやクラゴンが直接関わっているような、モーターレーシングの好きな人や、ドライビングテクニックの向上に情熱をもっている人たちと接していると、方向だけはだいぶ理解され、支持されてきているなという実感があるんです。
 クラゴンがゆるトレーニングに打ち込み続けていることに対しても、単純に運転が上手くなったり、速くなったりする以上のものがある、と。
 もっと、気持ちいいとか、楽しいとか、そういう面があるってことが、少しずつ伝わっている気がするんですよ。

高岡 それはいい傾向だね。というより、それはいい脳~(笑)。
 それにしても、今回はかなり充実した鼎談だったね。

クラゴン いや~、この鼎談で勉強させていただいたことがたっぷりありすぎ、面食らっています。

藤田 かなり重要情報、極秘情報までドバドバと流出した鼎談になってしまいましたから(笑)。

高岡 いや~、ホントに重要情報満載の連載になったので、読者の皆さんには何度でも読み直していただきたいね。

藤田 でも、これだけお話させていただいたのに、じつは肝心な決勝レースの展開は、さわりだけしかしていないような……(笑)。

高岡 それはまた次の機会にとっておこうよ。

クラゴン 最後にこの場をお借りして、高岡先生にお礼を申し上げさせてください。
 ニュルでポルシェに乗れて、しかも現地で「速い」と評価されたのも、すべて高岡先生のおかげです。本当にありがとうございました!

高岡 本場で認められるところまで成長できてよかったね。それが気持ちよ~くできているところが、ホントになによりだよ。

クラゴン ここまでこれたことに、正直自分でもビックリしているぐらいなんですが、こうしたパフォーマンスを体現できたのも、やっぱりゆる関連トレーニングあってのものですので、心から御礼申し上げます。

高岡 いやいや、クラゴンだけじゃないんだよ。何を隠そう私だって、ゆる関連トレーニングあっての高岡英夫なのだから。

一同 (爆笑)。

しっかりゆるトレーニングに取り組めば、もっともっと運転が上達している自信がある

高岡 真面目な話、ゆる関連トレーニングがこの世に存在する時代に生まれ合うことが出来て、本当に幸せだったと思うよ。

藤田 高岡先生がいらっしゃったからこそ、ゆる関連トレーニングも生まれたんじゃないですか(笑)。

高岡 たしかにゆる関連トレーニングは「よくぞつくれたな」と自分でも思うことがあるんだけど、それを考案した自分自身が、「すげえだろ~」とか、「オレのおかげなんだぞ~」っていう気持ちは、じつはまったくないんだよね。もっとも自分がそういう気持ちにならないのも、発明したものが他ならぬゆるんでしまうトレーニングだからなんだろうね。
 当然、その内容と効果に関しては、唯一無二の存在として絶対的な確信をもっているんだけど、だからといって人に押し付ける気もないんだよね
 「まあ、気がついてもらえるといいんですけど」といったぐらいの感じだね(笑)。 
 でも、ゆる関連トレーニングの存在に気がつかないままでは、ホントにもったいないよね~。

藤田 まさにおっしゃるとおりです。
 ところで、クラゴンにはすでに2011年のニュル24時間レースのオファーが来ていまして……。

  • リアエンジン・リアドライブのRR車であるポルシェは、四足歩行動物に例えると徹底した下半身優位なクルマ
  • クラゴンのもとには、すでにニュル24時間レースのオファーが
    2011年のクラゴンの活躍にもますます目が離せなくなりそうだ

クラゴン 最初にオファーが来たのは、今回VLNで契約した、チーム・シュマーザルからでした。VLNのレースが終わった直後に、チームの監督さんから、「シュマーザルはクラゴンに対して今後常にオープンだ」って、真顔でいわれていたので、別段ビックリしませんでしたけど(笑)。
 そのシュマーザルの話は、「今回乗ったポルシェ911GT3で24時間レースを」ってことだったんですが、VLNの走りっぷりでボクの株も上がったので、おそらく他所のチームからも似たようなオファーが来ると思うし、同じシュマーザルで乗るなら、もっと速いBMW・Z4にも興味があるし……といった具合で、まだ結論は先延ばしにしています(笑)。
 あんまり欲張るつもりもないのですが、9月のVLNから、今度の5月の24時間レースまでの間、しっかりゆるトレーニングに取り組めば、もっともっと運転が上達している自信がありますし、すでに手ごたえを感じているので、あせらず、欲張らず、いい体制で2011年のニュル24時間レースにもチャレンジしていきたいと思っております。
 引き続き、ご指導と応援のほどよろしくお願いいたします!

高岡 じゃあ、もっとゆるめよ。

一同 (大爆笑。)。

ー了ー

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