ホーム > 日米政治家の本質力を解く!~鳩山、オバマ、小沢、麻生…、最先端の身体意識理論で分析する現代日米政治家の真の実力とは!?~ 第2回 オバマ大統領(2)

日米政治家の本質力を解く!

~鳩山、オバマ、小沢、麻生…、最先端の身体意識理論で分析する現代日米政治家の真の実力とは!?~

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫[語り手]
  • 運動科学者。「ゆる」開発者。現在、運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、オリンピック選手、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」「ゆる呼吸法」「ゆるウォーク」「ゆるスキー」「歌ゆる」を開発。一流スポーツ選手から主婦・高齢者や運動嫌いの人まで、多くの人々に支持されている。大学・病院・企業などの研究機関と共同研究を進める一方、地方公共団体の健康増進計画での運動療法責任者も務める。ビデオ、DVD多数、著書は80冊を越える。
  • 松井浩
  • 松井浩[聞き手]
  • 早稲田大学第一文学部在学中から、フリーライターとして仕事を始め、1986年から3年間「週刊文春」記者。その後「Number」で連載を始めたのをきっかけに取材対象をスポーツ中心にする。テーマは「天才スポーツ選手とは、どんな人たちか」。著書は「高岡英夫は語る すべてはゆるむこと」(小学館文庫)「打撃の神様 榎本喜八伝」(講談社)等。高岡英夫との共著に「サッカー世界一になりたい人だけが読む本」「ワールドクラスになるためのサッカートレーニング」「サッカー日本代表が世界を制する日」(いずれもメディアファクトリー)、「インコースを打て」(講談社)等がある。

第2回 オバマ大統領(2)(2009.04.03 掲載)

――前回のお話では、オバマ大統領は下半身の「センター」は通っているけれど、腰から上の部分は、まだ育っていないということでした。今後、オバマさんが歴史に名を残す大統領になれるかどうかは、強いリーダーに欠かせない「センター」が育つかどうかにかかっているということですが、たとえば、経済政策を見ても、未曾有の経済危機という状況にあるにせよ、世界を驚かすような政策は打ち出せていませんね。

高岡 たとえば、誰でも知っているルーズベルトのニューディール政策ですが、実際経済状況を一変させたと同時に、近代政治経済史のなかでの一つのエポックになりましたよね。

――世界中の子供たちが教科書的史実として習っていますもんね。

後世にまで影響を与える施策のできる政治家には巨大な「センター」が形成されている

高岡 そういう経済政策を断行できたルーズベルトには、間違いなく現在のオバマよりはるかに強力な「センター」が通っていたんですよ。時代、世界を貫くと同時に、リーダーがそれを後世にまで影響を与えるような施策を断行できるかどうかは、本質力という観点でいえば、巨大な「センター」が形成されるかどうかにかかっています。

――ということは、オバマさんも、これから「センター」が育っていくかどうかですね。

高岡 身体意識がものの見事に育っていくかどうかは、必然の部分と、より大きな偶然の部分に影響されているわけです。たとえば、大統領自身が選んだスタッフとの相互作用であったり、他国の元首たちとの関係性にも左右されるわけですね。特に後者は偶然性の比重が大きい。

――ゆる体操とか、軸タンブリングなどをきちっとすればいいんでしょうけど。

高岡 松井君が面白いことを言ってくれたんだけど、ゆる体操やゆるトレーニングを正しい方法でしかも徹底的にやり込むと、これは確実に育ってしまうと言えます。さっき言ったスタッフや他国の元首との関係性とは別なところで、トレーニングの機序を踏んで、言わば必然の論理で育ってしまうんですよ。

――下半身まで「センター」が育っているのなら、ホワイトハウスで一日一時間でもトレーニングできればいいんですがね。でも、それも今のところ何重にも無理なことでしょうが…、では、オバマさんの身体意識で、他の特徴は何ですか。

熱い支援を受けながら、真のスターではなく、どちらかといえば独裁者に近いタイプ

高岡 あれだけ多くの人たちの注目を集め、精神的、経済的にも多大な支援を受けたにもかかわらず、人と人をつなぐ身体意識である「リバース」が発達していないことですね。たとえば、「リバース」というのは、5万人の大観衆の前でコンサートを開く人気歌手やサッカーの試合をするサッカー選手が、その観衆一人一人のことを考えているわけはないですけど、その大スターを見ている人に、自分のために彼は歌ってくれているとか、自分が彼を独り占めしていると感じさせるのが「リバース」という身体意識です。
  ところが、彼の場合は、そうじゃないでしょう。敏感な人はすでに感じておられるでしょうが、大勢の人が熱く応援しているにもかかわらず、個人個人とはつながっていない。自分とオバマの関係ではなく、皆で彼を応援している。そういう意味でいえば、真のスターではないんです。真のスターというのは、もっと大衆と一対一でつながっているものです。

――演説で「We」をよく使うというところと関係していますか。

高岡 「Yes,We can」というキャッチフレーズとかね。みなさんをまとめて引き受けてますというメッセージで、身体意識の観点では典型的な「パラボラ」型ですね。「パラボラ」という身体意識は、人の思いを集合的に集めるというもので、これもオバマの特徴なのです。「リバース」の発達した人だと、たとえば、「You」を使うとか、もっと一人一人に語りかけるという発想になりますよ。

――政治家は、どちらのタイプが多いのでしょうか。

高岡 オバマのように「パラボラ」の発達した政治家というのは、民主社会では稀ですよ。歴史をさかのぼっていくと、独裁者ですね。たとえば、王様が自分のものになるということは、あり得ないでしょう。つまり王と民衆はリバースで結ばれない、というのが原則なのです。そうかといって、これからにわかにオバマが独裁者になっていくという意味ではないのですが、「リバース」が発達してないのに、人々をよく掌握できるタイプの人間であることは、よく押さえておいた方がいいと思います。それと、ケネディ大統領と比べてみると面白いと思いますよ。

――ケネディも国民から熱狂的な支持を受けた大統領でした。

聡明さを感じさせないオバマは、「センター」が育たなければ偉大な大統領にはなれない

高岡 大統領になったばかりで亡くなってしまったのですが、ケネディは典型的に下丹田(意=支え)、中丹田(情)、上丹田(知)の三つが発達している人でした。中丹田からあふれようとする情熱、エネルギッシュなところを人々に見せながら、それを上丹田で抑える聡明さも見せることができた。それが、熱狂的な支持につながっていったんですけど、オバマは、違いますよね。聡明さを感じさせるところは、ほとんどないでしょう。

――議論などを聞いていても、「おー、頭がいい」と感じることはないですね。その点で演説原稿をスピーチライターに任せているのは、正しいですね。

高岡 自分にないものをスタッフで補っているということですね。といえば、スタッフを使いこなせる優秀さはあるのではという考え方もあるんだけど、一方で、あの若き政治的脚本家との出会いは偶然なんですよね。その偶然のプラスも大変大きかった。

――二人の出会いも、ライターが「君、すごいね」と感心したからではなく、「ここをこうすれば、もっとよくなるよ」と声をかけたのがきっかけだったそうですしね。

高岡 だからといって、経過は偶然であってはならない、ということはないんですよ。大事なのは結果で、もう大統領になってしまったんですから、ルーズベルト時代のニューディール政策のような、軸の通った実効のある政策が実施できるかなんですよ。外交も軸が通って、歴史全体を変えていけるかどうかですよ。

――ということであれば、これからセンターが通っていくかどうか、そこが関心の的ですね。

高岡 そうですね。パッとみた時に、上半身に天へつきぬけていくものが感じられるようになるかどうかですね。見抜ける人には、分かるとおもいます。そうでなければ、「黒人初の大統領」という意味で歴史に名を残しても、大統領としての業績で名を残すことは難しいでしょうね。


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