ホーム > 日米政治家の本質力を解く! 第13回 吉田茂(2)

日米政治家の本質力を解く!

鳩山、オバマ、小沢、麻生…、最先端の身体意識理論で分析する現代日米政治家の真の実力とは!?

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫[語り手]
  • 運動科学者。「ゆる」開発者。現在、運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、オリンピック選手、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」「ゆる呼吸法」「ゆるウォーク」「ゆるスキー」「歌ゆる」を開発。一流スポーツ選手から主婦・高齢者や運動嫌いの人まで、多くの人々に支持されている。大学・病院・企業などの研究機関と共同研究を進める一方、地方公共団体の健康増進計画での運動療法責任者も務める。ビデオ、DVD多数、著書は80冊を越える。
  • 松井浩
  • 松井浩[聞き手]
  • 早稲田大学第一文学部在学中から、フリーライターとして仕事を始め、1986年から3年間「週刊文春」記者。その後「Number」で連載を始めたのをきっかけに取材対象をスポーツ中心にする。テーマは「天才スポーツ選手とは、どんな人たちか」。著書は「高岡英夫は語る すべてはゆるむこと」(小学館文庫)「打撃の神様 榎本喜八伝」(講談社)等。高岡英夫との共著に「サッカー世界一になりたい人だけが読む本」「ワールドクラスになるためのサッカートレーニング」「サッカー日本代表が世界を制する日」(いずれもメディアファクトリー)、「インコースを打て」(講談社)等がある。

第13回 吉田茂(2)(2009.11.06 掲載)

大多数の国民を飲み込んでしまうような存在になり得た背景は「身体意識の構造」にあった

高岡 また、戦後の復興期に吉田茂のような為政者が現れて、大混乱状態の国民全体といえば言い過ぎですが、大多数の国民を飲み込んでしまうような、あるいは包み込んでしまうような存在になり得たという裏側は、こういう「身体意識の構造」でもなければ、とても説明がつかないでしょう。

※「身体意識」とは、高岡が発見した身体に形成される潜在意識のことであり、視聴覚的意識に対する「体性感覚的意識」の学術的省略表現である。『センター・体軸・正中線』(ベースボール・マガジン社)のはじめに(1ページ~)、序章(17ページ~)や『身体意識を鍛える』(青春出版社)の第2章「達人たちの〝身体づかい〟7つの極意を知る」(45ページ~)で詳しく解説しています。

 吉田茂がごく普通の人間だったら、国民と吉田茂との間に、そのような関係は決して起こり得ないですからね。実際、吉田茂の孫にあたる麻生太郎前首相と国民の間には、そのような関係は全く起きませんでしたよね。もちろん、一つ一つの発言や判断、行動の積み重ねじゃないのという人もいるでしょうし、それも顕在情報としては確かにそうです。しかし、そうした一つ一つの行動や判断が全体として大きな流れを作り出し、それが国民を巻き込んでいくという現象が、なぜ、起きるのかと言っても、これまでの学問では全く説明ができないですからね。

――学問的には、それこそ政治学に社会学、心理学、哲学といったあらゆる学問を総動員して、果たしてどこまで迫れるかという話ですね。また、私のようなライターは、細かなエピソードを集めて人物評伝を書くのですが、原稿用紙を300枚、500枚費やしたところで、それは、その人物のほんの一面を表現しているに過ぎないです。

幕末の英傑に匹敵するスケールの大きさも、「パラボラ」という身体意識の力強さと清明さが土台となっている

高岡 まさに、そうですよね。吉田茂が、人間として、政治家としての認識、判断、行動のスケールの大きさで国民を飲み込み、包みこんでいく、あるいは、納得する人もいれば納得しない人もいる中を、委細かまわず突き進んでいく。そういうスケールの大きな政治家たり得たのは、このパラボラと後に説明する「流舟」という身体意識があったからなんですよ。

――今回、講和条約の交渉ぶりを細かく調べてみたのですが、そのスケールの大きさは、幕末の英傑に匹敵するなあと思いました。

高岡 そう感じるでしょう。確かに、西郷隆盛や高杉晋作クラスのスケールを持っていると感じますよ。それは、身体意識で見ても、いえることですね。逆にいえば、この世に生を受けた同じ人間でありながら、彼らが、なぜ、あれほどのスケールの認識、行動力を持ちえたのかといえば、吉田茂の場合は、このパラボラの身体意識をもっていたから、ということなんですよ。

次回へ続く>>

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