ホーム > クラゴンの常識を圧倒的に覆す上達とパフォーマンスの謎に迫れ!~上達論編(12)~(2014.10.21 掲載)

クラゴン

2013年ニュルブルクリンクレースを語る 高岡英夫×クラゴン×藤田竜太鼎談

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫
    運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、企業経営者、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」をはじめ「身体意識開発法」「総合呼吸法」など、多くの「YURU PRACTICE(ゆるプラクティス)」を開発。運動総研主催の各種講座・教室で広く公開。一流スポーツ選手から主婦、高齢者や運動嫌いの人まで、多くの人々に支持されている。地方公共団体の健康増進計画などにおける運動療法責任者もつとめる。東日本大震災後は復興支援のため、ゆる体操プロジェクトを指揮し、自らも被災地で指導に取り組む。著書は『究極の身体』(講談社)など100冊を超える。
  • クラゴン
    レーシングドライバーとして世界最高峰のサーキット、ドイツ・ニュルブルクリンクでのレースで活躍するなど、専門筋をうならせる傍ら、ドラテク鍛錬場クラゴン部屋を主宰し、一般ドライバーの運転技術向上にも取り組む。「クラゴン」は日本自動車連盟に正式に登録したドライバー名。ゆるトレーニング歴は約13年。2012年6月のVLN4時間耐久レースで、日本人レーサー史上初のSP4Tクラス優勝を果たす。本場ヨーロッパのレーシング界において、常識を圧倒的に覆す上達と結果を出し続けている。
  • クラゴン
  • 藤田竜太
  • 藤田竜太
    自動車体感研究所(ドライビング・プレジャー・ラボラトリー)所長。自動車専門誌の編集部員を経て、モータリング・ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。ゆるトレーニング歴も10年以上で、某武道の指導者という顔もある。

クラゴンの常識を圧倒的に覆す上達とパフォーマンスの謎に迫れ!
 上達論編(12) (2014.10.21 掲載)

モーターレーシングの極限の世界で生きているクラゴンに予言じみたことを言うのはタブー

高岡 そういうこと。

クラゴン 自分としては、好きなように選んだだけのつもりだったんですけど……。

高岡 2012年に、それまで縁の薄かった、空力マシンというものに出会ってしまったわけだよね。
 だから私も、クラゴンがこのあとどういう道を歩んでいくのかな、と気にしつつも、そのことはまったく話題に出さずに楽しみにしていたんだけどね(笑)。

クラゴン はっはっはっは(笑)。そうでしたか~。

高岡 こういうのって、先を越して「キミはこういうことになるよ」って、わかったような言い方で語ってしまうと、いろいろな危険が生まれるんだよね。
 とくにクラゴンのように、モーターレーシングの極限の世界で生きている人物に、予言じみたことを言うのはタブーなんだよ。
 危険な世界で生きる人は、やはり自分自身の中から、勝手に生まれてきた考え方、想いにしたがって行動しないと、危ないよ。
 他人は万が一のことが起きたとき、一切責任が取れないからね。

  • 2013年ニュルブルクリンクレースを語る
  • モーターレースのような危険な世界で生きる人間は、
    自分自身の中から生まれてきた考えや想いにしたがうことが肝心だ

藤田 おっしゃる通りです。

高岡 それが、歌舞伎のような世界ならいいんだよ。一瞬のミスが生死にかかわることはないからね。
 でも、だからといって某歌舞伎俳優に、「ああせい、こうせい」と詳細かつ具体的に、指示を出すことはないよ。身体意識や身体遣いの是非の評価は、徹底的に厳格にしているけどね。

藤田 そうした加減も、指導者の力量が問われるところですよね。

高岡 そうだよね。

藤田 まさに見据えている射程距離で変わるというか……。

高岡 そういうこと。

クラゴン そこも射程か~。

高岡 だから、ワールドカップに遠征しているような選手も何人か指導しているけど、選手が海外に遠征してしまったら、私は基本的にノータッチ。
 選手の方から現地から連絡が来て、「この質問だけは、答えてあげた方がいいな」という事案があったときだけ、最低限アドバイスするのにとどめている。
 例えば、それがスキーの選手だとすると、雪上で何かをするのは、私の仕事じゃないからね。

これからもクラゴンにマンツーマンの指導をすることはない

藤田 高岡先生のスキーは、プロも裸足のレベルですが、それとこれとは話が別というわけですか。

高岡 私がスキーが上手いとか、どうとかという問題じゃないからね。
 私が担当しているのは、あくまでも雪上ではなく、地上に立っているその選手の面倒を見ることだからね。
 それをどのように雪上で生かすかは、けっきょく本人次第でしょ?

藤田 その辺は、自分で悟っていくしか道はないということですね。

高岡 それしかないね。だからクラゴンのトレーニングに関しても、この先どんどんヨーロッパでの注目度が上がり、ビッグなレース、ビッグなチームから出場することになっても、未来のレースに向かって、私がマンツーマンで指導することは絶対にないよ。
 それが誰よりもクラゴンのためだし、このことについては、もうはっきりと自分の中で軸ができているからね。
 もっともクラゴンの場合は、かなり初期の段階から、マンツーマンでなんて指導したことがなかったけどね(笑)。

  • 2013年ニュルブルクリンクレースを語る
  • 自分の専門でどれだけ生かせるかは本人次第。
    自分で悟っていくしか道はない

クラゴン そういえば、そうでした。はっはっはっは(笑)。

高岡 指導者ってね、「指導してください」って頼まれると、やはり「指導しなきゃ」って思うんだよね(笑)。

藤田 普通はそうですよね。

高岡 卑俗な言い方をするとさ、やっぱり指導をしないとカッコつかないでしょ。

藤田 指導者になる人って、そもそも人に指導をするのが好きだから、指導者になるケースも多いでしょうし。

高岡 言っておくけど、私だって、指導好きだからね!

クラゴン 押忍!!

マンツーマン指導をしなくて済むだけの講座の体系とメソッドが揃っている

高岡 よく「本当に指導が好きなんですね」って言われることがあるからね。
 実際、指導しなくてもいいところで指導しちゃうことはよくあるし(笑)。
 バーに飲みに行っても、バーテンダーに指導しちゃって、彼らを大喜びさせちゃって、「いや~、いいことを教わりました。指導料をお支払いしなくていいんですか?」なんて言われることはざらだからね。

クラゴン・藤田 (笑)。

高岡 だけど、クラゴンにはこれからもプライベートレッスンを行うつもりはないからね。
 それは意地悪でも試練でもなく、要するに具体的なレースに向かって、マンツーマンで「こうしなさい」「ああしなさい」という指導を一切しなくて済むだけの、膨大な手立てがあるからに他ならないんだよ。
 それがあの講座群であり、講座の体系であり、数々のメソッドなわけだ。
 当然、講座では他の受講者と同じように、クラゴンのことも精魂込めて指導しているからね。
 もし、講座でも指導していなかったら、さすがに指導者失格でしょ(笑)。オフィシャルでもプライベートでも指導しない指導者なんて、指導者なんて言えないからね。なにせ、指導実績がどこにもなくなっちゃうんだから(笑)。
 でも、クラゴンは運動総研のあまたの講座の中から、自分の意志で、自由に受講する講座を選んで、講座という海の中を、クジラのように自由に泳ぎ回っているわけだよね。
 しまいには、海だけではなく、空までだんだん飛びだしてきたいみたいだけどね。もちろん海というのは、水を本なりの水のこと、空というのは、空気の力、空力のこと、だよ

クラゴン なるほど~。

  • 2013年ニュルブルクリンクレースを語る
  • “空力マシン”のアウディで講座から得た学びを最大限に活かしきる!

レーシングドライバーにとって、自由以上に大事なものはない

クラゴン それにしても、講座を受講したときなどに、ご一緒した受講者の方から、「クラゴンさんは、本当に高岡先生の個人指導を受けていないんですか?」って、何度か聞かれたことがあるんですよ。

高岡 それは絶対疑われるよね。

クラゴン 疑われてます(笑)。

高岡 でも、プライベートレッスンを行っていたら、さっき言ったような理由で、ニュルで優勝するようになる前に、どこかで大クラッシュして、大変なことになっていたかもしれないからね。

クラゴン お~。

高岡 私が直接指導したら、ハンパじゃないことになるでしょ。そのハンパじゃないことを、ハンパじゃないところで生かそうとするよね。
 そんなシチュエーションで、生かそうとしたら、やっぱり死んじゃう可能性だって出てくるからね。

クラゴン いや~、いまだって一歩間違えれば、けっこう死にそうになっていますんで。

高岡 本当だよね。

藤田 車載映像を見ているこっちの方が、ゾクゾクするようなスピード領域に入ってきていますからね。

  • 2013年ニュルブルクリンクレースを語る
  • 一歩間違えれば、死につながるようなスピード領域での真剣勝負!!
    大事な局面になればなるほど自由になり切ることが大事だ

高岡 そう思うだろ。
 だから本当に完全な自由イコール「ゆるみ切ること」こそが、もっとも大事なことなんだよ。
 クラゴンのようなレーシングドライバーにとって、自由以上に大事なものはないといっても過言じゃないよ。
 いかにレースの真っ最中に自由になるか、さらには大事な局面になればなるほど、自由になり切る、というのが課題だよね。
 どこまでも、すべてに対して自由になり切れるクラゴンにしてあげないとね。だから試合に向かうクラゴンに対しては、常に常に「もっとゆるみなさい」とだけ、言い続けてきたわけだよ。
 そして「もっとゆるんでもらう」ためにこそ、今わかっている膨大なことを、あえてクラゴンには黙っておいてきているわけだ。
 いつか笑って話せるときが来たら、後日談として、「いや~、じつはあのときのクラゴンは……」って、たくさん語ってあげるから、いまは怠らずにもっともっとゆるゆるにゆるみ切ることに励みたまえ!

クラゴン 押忍!! 今日はためになるお話をありがとうございました。

 

2013年ニュルブルクリンクレースを語る 上達論編
-了-

次のニュル鼎談シリーズをお楽しみに!



▲このページの先頭に戻る