ホーム > 日米政治家の本質力を解く! 第6回 麻生太郎(2)

日米政治家の本質力を解く!

鳩山、オバマ、小沢、麻生…、最先端の身体意識理論で分析する現代日米政治家の真の実力とは!?

  • 高岡英夫
  • 高岡英夫[語り手]
  • 運動科学者。「ゆる」開発者。現在、運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長・推進委員。東京大学、同大学院教育学研究科卒。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、オリンピック選手、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」「ゆる呼吸法」「ゆるウォーク」「ゆるスキー」「歌ゆる」を開発。一流スポーツ選手から主婦・高齢者や運動嫌いの人まで、多くの人々に支持されている。大学・病院・企業などの研究機関と共同研究を進める一方、地方公共団体の健康増進計画での運動療法責任者も務める。ビデオ、DVD多数、著書は80冊を越える。
  • 松井浩
  • 松井浩[聞き手]
  • 早稲田大学第一文学部在学中から、フリーライターとして仕事を始め、1986年から3年間「週刊文春」記者。その後「Number」で連載を始めたのをきっかけに取材対象をスポーツ中心にする。テーマは「天才スポーツ選手とは、どんな人たちか」。著書は「高岡英夫は語る すべてはゆるむこと」(小学館文庫)「打撃の神様 榎本喜八伝」(講談社)等。高岡英夫との共著に「サッカー世界一になりたい人だけが読む本」「ワールドクラスになるためのサッカートレーニング」「サッカー日本代表が世界を制する日」(いずれもメディアファクトリー)、「インコースを打て」(講談社)等がある。

第6回 麻生太郎(2)(2009.04.17 掲載)

――前回のお話では、致命的ともいえる問題を連発しながらも、麻生政権がなんとかもっている理由をお聞きして大いに納得したのですが、確かに、この半年の首相の発言を聞いていると、口先でごまかしているというのではないのですね。当初は、口先で何とか交わしているのかという印象だったのですが、それを繰り返すうち、私自身も「何かあるぞ」と思うようになりました。口先だけなら、もっと非難を浴びて、あれだけ急速に支持率が下がったんだから、いくらなんでも首相の座から降ろされているでしょう。

“麻生流”が国民の猛反発を招かないのは、国民の批判を自分からいったん身体の中へ引き入れているから

高岡 そうですね。口先で交わしているだけではなくて、麻生さんには何か強さがあると感じるでしょう。あるいは、麻生さんのやり方に、国民全体がマヒさせられてきたような印象もありますよね。そんなことは、特別な身体意識の装置がなければ決してできないことだということを、知って欲しいと思います。極めつけは、中川昭一財務大臣のヘベレケ会見でしょうね。「こればかりは、いくらなんでも大問題になるだろう」と思ったけれど、あっさり「問題ないです」で終らせようとしましたからね。交わそうというより、一言で撥ねつけましたね。最終的には財務大臣の辞任に発展しましたが、国民や野党、マスコミが怒り狂ってケンカ状態になったかというと、終わってみればそうでもなかったでしょう。これは、なぜかといえば、国民の怒りや批判をいったん身体意識でからめとり、麻生さん自身からご自分の身体の中へ引き入れてくれているからです。

――ああ、深い分析ですね。

高岡 あれが、体の表面に固い身体意識があって、そこで撥ね返していたら、間違いなく大ゲンカになっています。本当には聞いてくれているわけではないんだけれど、一度は、自分の体の中へ身体意識でからめてとって引き入れてくれるから、国民の側は潜在意識の中で聞いてもらったという感じを持つんですよ。いったん受け入れられて、「まったく問題ないと思います」と返ってくるから、改めて反発することなく聞けてしまうんですね。「うわっ面で物をいう」場合の「うわっ面」に対し、顔(面)の奥にある左後頭部の骨の内側に沿うように形成された壁状の身体意識にまで引き入れてそこで反発反転させて顔(面)から怒りや批判のベクトルを突き返すメカニズムですから、これを名づけて「奥面返し」と呼んでいます。

――奥面返しか…、含蓄がありますね。確かに、何か問題が起こってコメントを求められても、釈明もしなければ、説明もしないですね。その話の中に深い情(中丹田)を感じることもないし、どっしりと構える胆力(下丹田)を感じるわけでもない。もちろん「頭がよいなー」という印象(上丹田)もありません。かといって、口先だけで交わそうというのでもないですものね。

高岡 自分への攻撃のベクトルが強ければ強いほど、返しのベクトルも強くできるわけですから、致命的かと皆思った中川問題でもさらにますます勢いよく面返しができちゃうんですよ。面返しをされた国民の方はあぜんとしてしまう。これですから、人物評をよくする人にとっても、麻生さんは、どうも納得のいかな人だと思いますね。

――漢字も読めないし、株に満期があると思い込んでいた人ですしね。舌禍事件は起こすし、周りでも問題が次々と起こるのに、そんな人物が、なぜ首相でい続けられるのか本当に不思議でしたからね。

前方へズレる身体意識が、辛うじて周囲の人々の頼りがいになっている

高岡 その背景には、こういう身体意識のメカニズムがあるということです。人の特別な人格や行動の背景には必ず特別なメカニズムがなければならないはずです。このメカニズムを語れるのは、今のところ身体意識理論だけでしょう。

――いやまさに隠された裏側から理解できる人で、知ると知らないでは大違いですよね。

高岡 また麻生さんについていえば、前方へ進む力というか、そういうと言い過ぎで、よたれかかるように前へズレるという程度のものなんですけど、そういう前へ出ようとする身体意識も、けっこう強く形成されているんですよ。これが、麻生さんの行動力の源になっていて、それなりの破壊力と周囲の人たちからの頼りがいになっています。歴史に名を残すような優れたリーダーとしての資質はないんですけど、こうした前方力系の身体意識の装置があるから、首相の座に踏みとどまっていられるともいえますね。

――相撲にたとえれば、身体の左側にある壁によりかかる力と、前方へわずかに出張る右脚で横綱を張っているということですか。

このレベルの首相を仰がなければならないのも、国民全体のレベルが低いから

高岡 だから、真の大横綱のようにセンターと3丹田が揃っていて、左右対称で、まっすぐ前へ進んでいくという身体意識の装置ではないんですね。古来、一国のそこそこ優れた指導者は、それなりにセンターと3丹田があることが、当たり前だったわけですね。もちろん、全部がきれいに揃っている指導者というのも、また逆の意味で稀な存在になりますが、強弱はあったとしてもそれなり揃っていた。ところが、現在の日本で、それがほとんど揃っていない政治家を指導者として仰がなければならないという現状をよく考えることが大切だと思いますね。やはり、国民の水準が高ければ、自然とリーダーの水準も高くなるし、国民の水準が低ければリーダーの水準も低くなるんですよ。この事実を改めて確認しておきたいと思いますね。麻生さんにしろ、小沢さんにしろ、1億2000万人を率いていく人が、このようなレベルでは困るわけですからね。本当に日本の将来を考えれば、これまでとは全く違う発想で、違うところからリーダーを見つけ出すか、全く違う発想と方法で育成する方向へ進まなければいけないですね。(ゆる体操や身体意識トレーニングはその際の有効な方法となり得るでしょう。)多くの国民が、国政を担う政治家の現状を見て、それを感じ始めているのではないでしょうか。

そのためには、私たち国民の側にももっと己に厳しく自分を鍛え高めていくことが、求められているのではないでしょうか。


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