- 吉田茂のDS図C

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――吉田茂のDSの特徴として、これまでに人々の思いを集合的に集める働きのある「パラボラ」、強力な前進力、上昇力を生み出す「流舟」、そして腰を下から超強力に支える超巨大なブレード状の身体意識についてお話頂きましたが、それ以外で特徴的なものはありますか。
高岡 下丹田(胆力)が、非常に珍しい形をしています。まず右の腰から2本で入り、それが1つに合わさって反時計回りで渦を巻いています。
――下丹田が渦を巻いているんですか。それは、めったに聞かないですね。
高岡 身体意識について詳しい人は、私の「動的下丹田」という言葉を聞いたことがあると思います。下丹田というのは、古来「臍下丹田」とも呼ばれ、下腹部に形成される身体意識のことで、「肚が据わる」、「肝っ玉が据わる」といった言葉で表現される胆力の源となるものです。しかし、この下丹田が形成されても、それが腰にへばりついてしまうと、物事には動じないけど、一方で意固地とか、頑固さを生みだすんです。
――そうなると、扱いにくい困ったタイプの人間になりますね。
吉田茂はかなりの聡明といわれるが、実は下丹田の稀にみる運動性が弱い上丹田を補っている
高岡 理想は、精神的にも、肉体的にも動揺しないで、なおかつ鋭敏で動きがよいというものですよね。つまり、非常な胆力があって、かつ自由自在な対応力やダイナミックな行動力もあるというタイプです。そういう人に形成される下丹田は、腰から切り離されて、浮いている状態なんです。「浮いている」といっても、ドシッと重量感があって、それでいながら動きの邪魔にもならない。これが、「動的下丹田」です。
ただし、「動的」といっても、普通は、下丹田そのものが動き回るわけではないんですね。下腹部に形成された潜在意識の塊が、腰から切り離されて浮いているだけです。ところが、吉田茂の場合、その潜在意識の塊自体が、重量感をもったまま渦巻き状に動いているんです。これを「回転状下丹田」と呼びますが、こういう下丹田をもった人間というのは、非常なる行動性と運動性を兼ね備えることができるんですよ。たとえば、周りからは、頭が非常にキレると評されているようなんですけど、実は、上丹田(知の源)そのものは、そんなに発達していない。DSを見ると、むしろ下丹田の稀にみる運動性が、上丹田の弱さを補っているのだと考えられます。
――やはり優れて対応型ということでしょうか。まず相手の出方を見て、それに対応していくという。講和条約の交渉を見ても、吉田は、自分の方から仕掛けていくのではなく、国際情勢の推移やアメリカなど大国の出方を見ながら対応して、しだいに自分のペースに巻き込んでいったという印象を受けました。
高岡 それもいえますね。この身体意識の構造では、そういう後の先が取れる交渉が可能になるんですよ。それから彼の認識や発言、行動を見ても、才気煥発で切れ味あるというのではなくて、非常に重量感をもっているでしょう。刀で表現すると、刃が薄くて切れ味が良いというより、厚みがあって切れ味がよいという感じですね。それもこの回転状下丹田の作用といえます。
――講和条約では、戦争責任に伴う賠償を放棄させ、領土も取られないという有利な講和を結ぶんですが、それと引き換えに米軍の駐留を認めます。つまり、日米安保条約を締結しました。同僚の政治家から、米軍の駐留を認めたことについて反論されると、「このご時世、番犬くらい必要だろう。犬とエサはタダなんだよ」と返して、相手が黙ってしまったということです。
高岡 それは、まさに「回転状下丹田」のなせる技ですよ。その身体意識があるから、そのような発言をしてしまうんですね。「犬とエサはタダなんだよ」という発言自体を見れば、頭がキレるなあと感心する言葉じゃないでしょう。しかし、東西冷戦が深刻になる一方で、日本はあからさまには軍隊を持てないし、莫大な軍事費を捻出する財政的基盤自体がない。さらに、米軍の駐留を認めることが、アメリカの世界戦略に巻き込まれていくという印象を与える中で、改めてこの発言を聞いてみると、非常な重量感をもって迫ってくるでしょう。
――この人に任せておけば、「大丈夫だな」という気になりますね。
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